屁売りじいさん(奥越前の昔話)


むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいたんやって。おじいさんは山へ薪(たきもん)をしに行ったんやって。おばあさんが朝御飯のあとかたずけをしていたら、「あらー、おじいさん、べんとう忘れていった、持って行ってあげんならん。」といっておばあさんは、山へ行ったんにゃって。おじいさんは、一生けん命薪をしているんでおばあさんは、「おじいさーん、この木の枝へべんとうつっておくでのう。」おじいさんは「なんとも(ありがとうの意・何分にも、まことに。)」と言いながら仕事をしていたんやって。
山のすずめたちが、「あれ、なんだろう。」とおべんとうのところへ集まってきたんにゃって。そしてあっちつつきこっちつつきしている間に、結び目がほずけて、おべんとうが落ちたんやと。そこですずめは、喜んで「ごはんだ、ごはんだ、チュンチュン」と食べたんやと。
おじいさんがお昼になったので「どーれ、飯にしょうか。」とおばあさんが、かけておいてくれた木の下まで来たら、すずめのクソやら、羽根がまじったおべんとうが落ちていたんやって。おじいさんは仕方がないんで指先で羽根やら、クソをのけて、ご飯を食べたんやと。
そして木のかげで休んでいたら、うとうとと眠とうなって寝てしもうたんやって。そしたら、おしりがむずむずしてきたと思ったら、
~~スズーメ ヘンゴロ ヘンゴロ チンチョン パラリンショ ソノジャッコン ジャラリンショ
とおもしえ、屁が出たんやって。これはおもしえ屁や、おばあさんに聞かしたろうと、急いで山から帰って来たんやって。「おばあさんや、おばあさんや、うら、とってもおもしえ、屁が出るんにゃ。ようきいておれや。」
~~スズーメ ヘンゴロ ヘンゴロ チンチョン パラリンショ ソノジャッコン ジャラリンショ
「おじいさん、なんたおもしえ屁やの。おじいさん屁売りに行ってきたら。」「そうやなあ。屁売りにー。それはおもっしょかろう。ほんだ、屁売りに行ってこーわい。」
おじいさんは、町へ行って、「屁売りー、屁売りー。」と大きな声で呼ばりながら、大道の方へ行ったんやって。向こうから、お殿様の行列が来られて、「屁売りー、屁売りー。」の声を聞かれて、おすみをあげられ、「じい、屁売りと言ったな。これは面白い。わしの前で屁をこいてみよ。」おじいさんは、かしこまって、
~~スズーメ ヘンゴロ ヘンゴロ チンチョン パラリンショ ソノジャッコン ジャラリンショ
「これは面白い、これは面白い、もう一ぺんこいてみよ。」
~~スズーメ ヘンゴロ ヘンゴロ チンチョン パラリンショ ソノジャッコン ジャラリンショ ジャラリンショ
お殿様は、「これは大変面白かった。ごほうびをやるぞ。」と言われ、おじいさんはたくさんの小判をもらって、喜びいさんで家へ帰り、おばあさんに見せていたら、となりのじいさんが、これを見て、「どこでそんなにもろてきたんやいの。」「屁売ってもろうてきたんや。」っていうたんやって。
となりのおじいさんは、あわてて家へ帰って、「ばあさん、飯をうんとたくさんたいてくれ。」「おじいさん、なんでやいの。」「うん、どうでもよい。はよう、はよう。」といって、おばあさんに御飯たかせたんやって。御飯をたくさん食べたとなりのじいさんは、「屁売りー、屁売りー」とまねをして大通りを歩いていたんやって。
ところが、そこを通られたお殿様が、「おう、屁売り、買うてやるぞ、一つこいてみよ。」と言われたので、じいさんは「ウーン」ときばったんやって。すると「ブーッ。」と大きな音といっしょに、くさーいくさーい屁をこいたんやって。お殿様は顔をそむけながら「もう一度こいてみよ。」と言われると、となりのじいさんは、「ブーッ、ブーッ。」とくさいくさい屁をこいたんで、お殿様は「無礼者」といって大変おこられたんやと。これでおしまい。

イルーナ戦記 RMT